祖父の庭と池

       

      
          工場の事務所の横に小さな庭と池があります。この庭と池は
         私の祖父が手作りで仕上げたものです。
          何もなかった所に祖父はスコップを振るい、モクモクと池の
         窪地を掘っていたのを覚えています。小学校3年生位だった私は、
         祖父の庭づくりをそばで見ていて、初めのうちなにをしているのか
         よく分かりませんでした。
          その後、石や庭木を配し池には鯉を放して祖父の庭は本格的な姿に
         なっていきました。
          祖父が亡くなって二十年の歳月が経ちますが、庭も池も健在です。
         今では鯉はもちろん、蛇や蛙やトカゲや植物等、多くの小さな命を
         養う場となっています。 
          祖父亡き後、父がこの庭と池を潰して事務所を建て替えると二度程
         言い出したことがありましたが、私が強硬に反対して今に至っています。
          この小さな庭と池は、私にとって祖父の思い出なのです。